【特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律】
去る平成19年4月26日、参議院の第166通常国会で特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律が、賛成196票、反対0票の全会一致で可決し、内閣に送られました。
木香館では、この法案に関する情報を平成19年4月4日に入手し、今日まで様々な観点から、この法案を検討し、今後この【特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律】の施行後も現在のログハウスの施工業務を継続しログハウスメーカーとして存続させる事を決定いたしました。参議院を通過し確定となった、この法律の施行は公布の日から1年以内(一部法律は2年6ヶ月以内)とされています。
この法律は平成11年に公布された住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)と併用して適用され「新築住宅の買主の利益の保護並びに円滑な住宅の供給を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と第1章、第1条の総則(目的)に書かれています。
これまでの品確法は、瑕疵の基準を明確にし、住宅の品質確保を促し、それにより住宅性能保証と言う制度が生まれ建設(建築)業者による保険加入で住宅の性能、品質を担保すると言うものでありましたが、今回その品確法と大きく異なる点は建設(建築)業者による住宅の精度、品質の良し悪しに関係なく万が一、瑕疵が発生した時に於いて事前に、その瑕疵担保を確実に保証できる金額(1棟2000万円以内)を供託金として積むか、保険加入することが義務付けられ、罰則規定も明確にされた事です。
これによりエンドユーザーである消費者は手厚く保護される事になりますが、この法律の目的は資金力の無い建設(建築)会社は公布から2年6ヶ月以内に、倒産なり自己破産するなり、廃業して構わないと言うもので、資金力のある建設(建築)業者だけが生き残る事で、住宅の品質の向上を目指そうというものです。
これは品確法が施行されてからも建築紛争は絶えず、瑕疵担保を保証させようと司法の場に持ち込んでも現行法では、仮に勝訴したとしても「無しからは取れぬ」で結局、泣き寝入りせざるを得ない消費者が多い事を憂いたものに他なりません。
消費者が手厚く保護される一方で、この法律は建設(建築)業者には大変に厳しいものとなっています。担保される金額は保険制度を利用する事で1棟辺りの建設(建築)会社が負担する費用を軽減する事が出来ますが、これは品確法をクリアできている建築物でなくてはなりません。ログハウスは住宅性能保証を取り付けようとすると、基本的には保険加入は出来ず可能であったとしても多額の保険金を支払う必要があり現実的ではありませんでした。
今回、参議院を通過し内閣に送られたこの法律でも保険加入と供託金の二者択一が義務つけられていますが、保険加入を選択するのであれば先ず品確法をクリアしている事が絶対条件となることでしょう。
壁が下がる(丸太組み工法に於けるセトル)、柱や梁の割れや捻れによって壁が壊される(未乾燥材を使用する軸組み工法 P&Bなど)と言った建築物、つまりログハウスが「主たる構造と雨水の侵入」に瑕疵担保責任を科した、この法律がログハウスを保険加入で可能と言う訳にはいかないであろうと考えられます。だからこそ建設(建築)業者にとって大変に厳しい法律と言えるのです。この法律の第2条には「住宅とは品確法第2条、第1項に規定する住宅をいい」云々と書かれていて、人の住む家、全般を指していますので、プレハブも鉄筋もRCも木造建築からログハウスに至るまで、全てに網を架けています。
木香館は既に【特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律】の施行を事前に知り、この法律の公布、施行後も事業の継続を決定しています。
この法律は住宅産業のエンドユーザーである消費者の方々を守るための法律であり、この法律ができたこと事態を憂いているのではありません。
既に参議院を通過し内閣に送られ、多少の手直し後には公布される、建設(建築)業者にとって当に生死を分けるほどのこの法律について今現在、ごく一部の建設(建築)業者しか知り得ていないと言う現実を憂いています。建設(建築)業者のためにと言う事ではなく、住宅産業のエンドユーザーである消費者の方々のために、国土交通省は一日も早くこの法律について告示し大々的に公告するべきではないか、と考えています。
ログハウスは、その使われている素材の特徴から築後、数年間または更なる長期間にわたり、住まい手と、造り手の縁を切る事の出来ない特殊な建物である事はログハウスに暮らしている方、或いは、これからログハウスをお建てになろうと考えていらっしゃる方々の周知の通りで御座います。この法律の瑕疵担保供託金額は国交省のホームページをご覧いただければお分かりになりますので、あえてここでは、その金額云々は控えますが私が、その供託金額を見たときの第一印象は「この法律が施行された時、はたして何軒のログメーカーが存続できるのであろうか・・」と寒気さえ覚えました。
私はこれまでに、契約後にメーカーが倒産してしまい、契約金の支払いを済ませた段階で完成を断念せざるを得なくなった方、工事進行の過程でメーカーの倒産に直面し、困った果てに残工事を別の業者に依頼することで大きく予算をオーバーしてしまった方、完成後、間も無くメーカーが倒産してしまい完成後、クレームを言いたくても、メンテナンスやアフターフォローを依頼したくても何も言えない方など、多くの悩んでいらっしゃる方々を知っているからです。
この法律が公布され施行されれた時、具体的に生き残れるメーカーが何軒、とは判断つきませんが現在、事業を存続されている、かなり多くのメーカーが生き残れなくなると言う予測は「当らずとも遠からず」ではないかと思っています。
勿論、大手メーカーだから大丈夫!と言う訳にも参りません。大手メーカーはフランチャイズ組織を形成していて本部は大手でも、実際に契約を締結するのは地方のディーラーであるからです。契約を締結するディーラーに瑕疵担保供託金を50日以内に供託できる資金力が無ければ、法律ではその後の契約締結を行ってはならないとし、罰則として「1年以内の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とあります。
このまま条文どおりに受け止めると、おそらく多くのログメーカーが存続不可能となる事も予想されますので、当然、ログハウス協会も躍起に動くと思われますが、条文にはログハウスだからと言う行は全くありません。予測としてはログハウス協会で、ログハウスに対応した保険の引き受け会社を交渉し決める事、その程度の事しか今現在は思いつきませんが、恐らく、その保険料は高額なものとなり、年々保険料は重さを増して格闘技に例えるならガードもせずにボディーブローを許しラウンドを重ねるごとに効いてきて、一発のパンチでダウンしてしまうように、会社の経営を圧迫してゆく事が考えられます。
この法律に関しての条文は未だ理解する途についたばかりですので、正確に理解しているわけではありませんが、そう大きく誤った解釈もしていないと思っています。
住宅産業のエンドユーザーであります消費者を保護する法律が出来る事によって、返って泣きを見る消費者が出ないことを祈るばかりです。
これは私の個人的見解ですが、この法律が広く建設(建築)業者の間に広まれば住宅産業のエンドユーザーである消費者の皆様には、三つの良くない事が考えられます。
一つは、施行後、存続不可能な建設(建築)業者による値引き合戦の遣り儲けにあい、安いと思って建設を依頼したが、とんでもない工事をされクレーム言いたくても既にその会社は存在しないと言う事態も考えられます。
二つ目は、この法律の施行後も存続するかのように振舞って、ある日、突然、建設を依頼している会社がなくなってしまい工事が途中で頓挫したり、計画を断念しなくてはならなくなると言う事も考えられます。
三つ目は、この法律の施行に向けて確実に住宅コストがアップする事です。
前述の一、二、については明らかに予測の範疇をでていませんので、この様な事は起きないのかも知れませんし、消費者の皆さんの賢い眼で建設(建築)業者を選択できれば充分に回避が可能な事でしょう。しかし、三、の住宅コストに関しては確実にアップする事だけは回避のしようがありません。何故なら、この法律の第30条の別表には、新築物件1棟につき瑕疵担保供託金額は2000万円以下と定められています。6ヶ月間で10棟の引渡しを行えば3800万円以下の供託金を積み、次の6ヶ月間で更に10棟の引渡しを行うと累計で1年間に20棟とカウントされ供託金額は3800万円以下と定められています。この割合で5年を経過すると引渡しの棟数は100棟となり供託金額は一億円以下と定められ、10年間の瑕疵担保を確保する法律ですから10年目には200棟となり一億四千万円を供託できなければ、消費者と工事請負契約を締結してはならないと決められています。
極端な例となってしまいますが仮に半期に1棟、年間2棟の工事契約をしている建設(建築)業者が、1棟2000万円の工事契約を締結して引渡しを行うと、2000万円以下の供託金額を納めなくてはならなくなり、その契約額の殆どを供託金額として納付したら、会社の経営が立ち行かなくなる事は消費者の皆様もご理解できると思います。
年間2棟の建設(建築)業者が10年間の瑕疵担保供託金額を納付する場合、10年間で20棟の引渡しとなり総額で7000万円以下を納付します。これを着工棟数で割ると1棟あたり350万円の供託金額となりますが、10年間で500棟の引渡しが出来る能力のある建設(建築)業者は総額で一億四千万円以下となり、これを着工棟数で割ると1棟あたり28万円の供託金額となります。更に最大では年間3万棟を超えると1棟あたりの瑕疵担保供託金額はたったの1万5千円になるとされています。
この事からも、この法律が大手企業優先、弱者切捨てが狙いである事が一目瞭然です。
日本民族は持ち家志向が大変に強い反面、全国規模で持ち家を見ると現実には「家余り現象」が顕著となっていて、政府としては供給側を制限しないと、これから先の日本の住宅事情が考えてもいない方向に進んでしまう事も今回、同時に解決しようと言うところが見え隠れしています。この法律は5年後に「必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とありますが、施行後5年を経過した時点では中小、零細の建設(建築)業者は既に存在していない事も予測できます。
私は、こうした法改正がある度に、其れに伴って消え行く「日本の建築文化」が惜しまれてなりません。日本の建築文化を代表する入母屋造り、数奇屋造りの家を造り残せる建設(建築)業者こそ、今回の法改正で、その殆どが終焉を迎えようとしている中小、零細建設(建築)業者ではないか、と思うからです。
今回の【特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律】について記述させていただいた事柄は、もしかすると解釈の違いなどがあるのかもしれません。
今後、この法律を更に深く租借し検討を重ね、間違いがあると思われる行については加筆修正を加えて参りたいと考えておりますが、いずれにしても消費者の皆様の賢い眼で、これからの夢を託す建設(建築)業者を選択して頂きたい、この事は聊かも変わる事はありません。